化粧品が大きく進化、再生医療を用いた「幹細胞化粧品」とは

監修者
セルメディカルチームジャパン 編集部

 再生医療は医学の分野にとどまらず、化粧品の分野にも次世代化粧品として広がっています。これまで化粧品とは異なる事業を行っていた企業の化粧品業界参入が見られ、日々新たな技術を用いた化粧品・スキンケア商品が誕生しているようです。再生医療をどのように美容製品に応用させていっているでしょうかー。その実態に迫ってみました。

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1. 再生医療の応用した技術を応用して研究がすすめられる美容業界のいま

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 世界中で再生医療の研究開発と臨床応用が、急速に進んでいます。経済産業省によると、人工的に作製される人工多能性幹細胞「iPS細胞」を軸とした再生医療の国内市場規模は、創薬、機器、美容関連を含めて2030年には、約2兆円に拡大する見通しといわれています。

 この中でも、再生医療を応用して創出される新規化粧品のビジネス規模は、約600億円に上ると推計されており、新たなビジネス創出に期待が高まっています。化粧品も大きく進化しており、再生能力がある幹細胞を使用した商品も発売されています。では次世代型化粧品分野に参入している異業種の企業が、どういう取り組みをしているのかを紹介していきましょう。

2. ロート製薬

 ロート製薬は人間の体にもともとある「体性幹細胞」の実用化を促進するため、2013年に「再生医療研究企画部」を新設しました。体性幹細胞の中でも脂肪幹細胞に着目し、難治性疾患や希少疾患などの治療に貢献する医薬品の早期実用化を目指しています。さらに医学の世界だけに限らず、アンチエイジング化粧品開発のために皮膚幹細胞の研究、皮膚疾患の遺伝子研究、iPS細胞の研究に取り組んでいます。

その結果、皮膚の下にある脂肪幹細胞内のミトコンドリアが皮膚を支える細胞に移動し、細胞の老化を抑制する仕組みを発見しました。さらにミトコンドリアの移動を促進する成分「ステムSコンプレックス」の開発により、コラーゲン生産量をアップさせ、かつてないハリのある肌がよみがえる製品を市場に出しています。

 

3. 富士フイルム

 写真フイルムと化粧品は一見すると畑違いにも思えますが、実は意外な共通項を持っていました。

 肌にハリやうるおいを与える「コラーゲン」が、写真フイルムの主成分だったことがわかりました。そこで富士フイルムは、写真フイルムの色あせを防ぐ「抗酸化技術」や、写真用粒子の細かな機能や安定性を高める「ナノテクノロジー」を化粧品開発に応用しています。

 他にも、写真の色あせを防ぐ「抗酸化技術」が肌のシミやシワ対策に役立つことも明らかになりました。

 こうした背景の下、富士フイルムは2006年にスキンケア商品を立ち上げ、化粧品事業を開始。肌に良いとされるナノビタミンAなどの成分本来のポテンシャルを引き出した製品を市場に送り出しています。

 富士フイルム傘下のジャパン・ティッシュ・エンジニアリング(愛知県蒲郡市)も皮膚や軟骨の再生医療製品の生産・販売を手掛けており、富士フイルムは再生医療事業の早期拡大を目指しています。

4. コーセー

 コーセーは皮膚細胞に着目してきました。1980年代から同一人物の3647566267歳時点での皮膚細胞を採取し、液体窒素の中に入れて凍結保存。それぞれの細胞からiPS細胞を作り、元の細胞とどのような差があるかを突き止めました。これは老化のメカニズムを解明するものです。このような研究を進めながら、新しい化粧品開発に取り組んでいます。

 

5. アルビオン

 アルビオンが化粧品分野に進出したきっかけは、2002年にフランスのパリで開催された国際皮膚科学会で皮膚幹細胞に関するセッションに参加したことでした。発表された医学の分野が、化粧品の分野への応用ができるのではないかと考え、皮膚幹細胞の研究を開始しました。皮膚幹細胞へアプローチする製品の研究を進めていく中で、20038月に皮膚幹細胞のメカニズムを取り入れたスキンケアシリーズの商品を発表しました。従来の商品は、肌の悩みを改善していく、いわば対処療法でしたが、発表された商品は細胞を常にフレッシュな状態に保つことを目指したものといわれています。

 

4. 幹細胞化粧品には「動物由来」「植物由来」「ヒト由来」の3種類がある

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 化粧品に使用される幹細胞には「動物由来」、「植物由来」、「ヒト由来」の3種類があります。

 動物由来の原料には、羊の毛根や胎盤から採取された幹細胞が利用されています。羊は人間の幹細胞に近いと考えられていますが、アレルギーなどの安全性の問題があり、日本ではあまり流通されていません。

 植物由来は、傷ついた細胞を再生させる力を持つ特定の植物の幹細胞が使用されており、高い抗酸化力と保湿力が期待されています。

 ヒト幹細胞由来は、人間の皮下脂肪から採取した幹細胞を培養する際の「幹細胞培養液」が使用されています。

 化粧品に幹細胞そのものが使用されているように見えますが、日本の化粧品には、幹細胞を培養した際の培養液が配合されています。

 化粧品開発の技術の成長はめざましく、幹細胞を活性化させて皮膚の再生を促進し、黒ずみやできものでザラザラした肌を柔らかい肌に戻すというEGF(上皮成長因子)を取り入れた商品も発売されています。

 2025年に開催される大阪万博では、ロボット、食、スポーツ、笑いなど健康を支える分野の最先端技術や文化の紹介の他に、関西を拠点にiPS細胞を使った再生医療の体験ツアーも企画されています。化粧品業界も含め再生医療の実用化に向けての動きは、これまで以上に活発になってくるといえるでしょう。

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