足の血管が浮き出たり、足のむくみでだるかったりする場合は、下肢静脈瘤(かしじょうみゃくりゅう)かもしれません。徐々に重症化することもあるため、症状が軽いうちから注意が必要です。下肢静脈瘤の軽症者から重傷者向けに、一般的な治療と再生医療を交えて詳しく解説します。
▼セルメディカルチームジャパンのサイトでも詳しく説明されています。
まずはお気軽にご相談ください。
https://www.cellmedicalteamjapan.com/
1. 下肢静脈瘤ってどんな病気?
そもそも人体の血管には、心臓から送り出された血液を体のすみずみに届ける血管の動脈と、動脈によって送り込まれた血液を心臓に戻す働きをする静脈があります。また静脈には静脈弁があり、逆流を防いでいます。
この静脈弁と血液を押し上げる作用があるふくらはぎの筋肉は、血流に重要な役割を担っています。静脈弁が壊れてしまったり、ふくらはぎの筋肉のポンプ作用が弱くなったりすると、静脈内に血液がたまってしまい、血管が伸びたり、曲がったり、腫れたりして、足の静脈が太くなりぼこっとしたこぶのようなものができます。この状態を下肢静脈瘤といいます。下肢静脈瘤は皮膚のすぐ下にある表在静脈にできやすいのが特徴です。
2. 下肢静脈瘤の原因と主な症状
下肢静脈瘤ができやすい人にはいくつかの特徴があります。また下肢静脈瘤にはさまざまな症状があり、重症度によっても現れる症状には個人差があります。ここでは原因や特徴、症状を解説します。
■下肢静脈瘤になりやすい人の特徴は以下です。
・両親、きょうだいに下肢静脈瘤の人がいる
・立ち仕事、座り仕事が多い人
・肥満や運動不足の人
・中高年(45歳以上)の男女
・妊娠・出産を経験した30歳以上の女性
など
下肢静脈瘤は男性よりも女性に多いのが特徴で、男性に比べ2~3倍多いとされています。特に妊娠や出産の経験者に多く、その原因は女性ホルモンの変化だといわれます。また両親ともに下肢静脈瘤だった場合、その子どもの90%、片親の場合でも最大で62%の子どもに発症するという報告もあります。職業的な要因では、調理師や美容師などの立ち仕事の職業に多くみられることが分かっています。また慢性的な便秘も下肢静脈瘤のリスク因子です。
参考:J-STAGE「静脈断面積変化パターンと下肢静脈瘤リスクとの関係性」
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jsmbe/Annual58/Abstract/Annual58_392/_article/-char/ja/
■下肢静脈瘤の主な症状は以下です。
・足のだるさ、重み
・足の疲れ、むくみ
・足の痛み
・足がつる(こむら返り)が起こる
・足の血管が浮き出る
・血管の蛇行
・静脈瘤の傷(かさぶた)からの出血
・皮膚の色素沈着、潰瘍、湿疹
・皮膚が硬くなる
・月経時に足の不快感がある
など
下肢静脈瘤は発症後に自覚症状がないことも珍しくありません。また全ての症状が現れるわけではなく、進行具合によって現れる症状が異なる場合もあります。皮膚表面にぼこっと長く浮き上がっている静脈瘤でも全く痛みがない場合や、反対にクモの巣のような見た目の細い静脈瘤でも痛みが出ることもあるため注意が必要です。
3. 下肢静脈瘤の治療方法
下肢静脈瘤は命に関わる病気ではありませんが、血液のうっ血が起こりやすいことで血栓の誘因になる可能性があります。特に女性の場合は、見た目の問題から治療を望む方も少なくありません。
下肢静脈瘤の根治手術治療を行うのが一般的です。手術治療には、静脈抜去術(ストリッピング手術)、高位結紮術(こういけっさつじゅつ)、硬化療法による治療があります。いずれも血管内にできている静脈瘤を取り除いたり、こぶを縛ったり小さくしたりする侵襲的な治療法です。またレーザーやラジオ波を使って、血管内から静脈瘤を焼灼する比較的に体の負担が少ない治療法もあります。
現在は多くの病院で日帰り手術を取り入れており、当日から歩行や車・自転車の運転もできるようになっています。
4. 下肢静脈瘤の予防法
下肢静脈瘤は一度発症すると、一般的には医療機関で手術や弾性ストッキングを使用した保存的治療などの対処法があります。そのため下肢静脈瘤にならないように日々の予防が大切です。主な予防法をそれぞれ解説します。
■マッサージ
足のマッサージをすると、足の血管内に滞っている血液をスムーズにすることができるため、下肢静脈瘤の悪化しないよう予防したり、痛みやだるさなどの症状を改善したりできます。手の力を入れ過ぎずに足から心臓に向かってマッサージしましょう。このマッサージは睡眠前や入浴時に行うのが有効です。1回2~3分程度でも毎日行うことが重要です。
■食生活の見直しと運動
高血圧や便秘、肥満は下肢静脈瘤を悪化させる要因です。そのため塩分や脂質の多い食べ物の摂り過ぎは控えましょう。また運動不足も下肢静脈瘤のリスク因子です。運動は全身の血の巡りを良くなり、ふくらはぎのポンプ作用も強化されます。軽めのジョギングやウォーキングなどを継続して行いましょう。
■長時間の立ち仕事は避ける
下肢静脈瘤は、職業柄立ち仕事が多い方に起こることが分かっています。立ちっぱなしは重力により血液が逆流しやすくなるため、1時間に1回の頻度で屈伸したり、休憩したりするなどの対策を講じましょう。足置き台で足を心臓よりも高くするなどの対策も有効です。
■弾性ストッキングの着用
弾性ストッキングは足首側になるにつれて圧迫数が高くなっているストッキングです。長時間の立ち仕事は、ふくらはぎの筋肉の活動量が少なくなるため、足の血流が滞りやすくなります。弾性ストッキングを履けば足先から心臓への血液の戻りを助け、静脈内でのうっ血を予防することができます。妊娠中の方や立ち仕事の方は着用するようにしましょう。
5. 下肢静脈瘤に対する再生医療
下肢静脈瘤の新しい治療法として再生医療があります。再生医療とは、機能障害や機能不全などで正しく機能しなくなった組織や臓器に対して、細胞や人工的な材料を使って損なわれた機能の再生を図る医療のことです。この技術は、下肢静脈瘤の重症度の高い患者への治療にも有効です。
重症度の高い患者とは、下肢静脈瘤により下肢に潰瘍やひどい痛み、歩行が困難な患者を指します。他に治療法がなく再生医療を行うことで、初めて病状の改善などが期待できる患者さんが対象です。
下肢静脈瘤に対する再生療法はいくつかあり、遺伝子治療や成長因子などの蛋白を使用する方法、細胞療法の3つです。これらの治療によって毛細血管や血管を増やせるため、症状の改善が期待されています。再生医療のうち、細胞療法の骨髄細胞を使用する治療法は、わが国でも2003年6月に高度先進医療に認可され、保険給付が承認されています。
6. まとめ
下肢静脈瘤は、足の静脈にこぶができることで痛みやむくみ、血管が浮き出たり蛇行したりする病気です。特に30歳以上の女性に多く、遺伝的な要因や立ち仕事や肥満、運動不足などもリスクになることが分かっています。
現在では手術での治療のほかに、重症度の高い場合には再生医療で血管を増やして症状を軽減する治療も行われています。一度発症すると自分で改善することは難しいため、生活習慣を見直したり、立ちっぱなしの時間を減らしたりしながら、弾性ストッキングを着用するなどの予防を講じることも大切です。
- コメント -