「再生医療を受けたいけれど、保険は適用されるの?」
「できれば保険適用で治療を受けたいけれど、適用外だといくらくらいかかる?」
再生医療と保険について、そんな疑問を持っている人は多いでしょう。
結論から言えば、
◎保険が適用される再生医療もある
◎が、ほとんどは適用されず全額自己負担
です。
そもそも保険が適用されるには、その治療の有効性と安全性が確認され、国に認められなければなりません。
が、再生医療はまだ新しい治療であるため、効果の検証が不十分なものが多数あるのです。
国も保険適用を早く進めたい方針で、そのための法整備も行なっていますので、今後は少しずつ保険適用される治療も増えてくるでしょう。
とはいえ、まずは現状を把握することが必要ですよね。
そこでこの記事では、
◼️ 再生医療に保険は適用されるかどうか
について、くわしく説明します。
それを踏まえて、
◼️ 保険が適用される治療・されない治療
をわかりやすい表にしました。
特に保険適用外のものについては、以下の治療の費用目安も紹介します。
・がん
・変形性膝関節症
・アンチエイジング
・脱毛症
・乳房再建
この記事を最後まで読めば、再生医療の中で何が保険適用で何が適用外か、適用外のものはいくらくらいかかるのか、具体的に知ることができます。
この情報を踏まえて、あなたが納得いく金額で再生医療を受けられるよう願っています。
▼セルメディカルチームジャパンのサイトでも詳しく説明されています。
https://www.cellmedicalteamjapan.com/
目次
1. 再生医療に保険は適用される?
そもそも再生医療に健康保険は適用されるのでしょうか?
その答えは、「適用されるものもある」です。どういうことか、くわしく説明していきましょう。
1-1. 現在は多くの再生医療は保険適用外
以下の表を見てください。
左の欄が保険適用される治療、真ん中は保険適用と自由診療の併用、右の欄は自由診療でのみ受けられる治療です。
国の承認を受けている治療 | 先進医療と認められている治療 | 自由診療で受けられる治療 |
---|---|---|
・造血幹細胞移植後の急性移植片対宿主病 <条件及び期限付き承認> | ・胸髄損傷 | ・がん |
現在のところ、保険が適用される再生医療は、上の表であげた治療がすべてです。
再生医療はまだ新しい医療なので、保険適用に必要な有効性と安全性の確認がなされていない治療が多いのです。
(「条件及び期限付き承認」については、次の項でくわしく説明します。)
真ん中の欄であげたのは、再生医療のうちでも国が「先進医療」と認めた治療です。
「先進医療」になると、全体の治療のうち先進医療にあたる部分は保険適用外ですが、それ以外の通常の治療にあたる部分(診察、検査、投薬、入院など)には保険が適用されます。
ただこれも、認められているものは多くはないのが現状です。
そしてこれら以外の再生医療は、すべて自由診療=全額自己負担しなければなりません。
がんなどの難病の治療から薄毛治療、美肌づくりまで、ここにあげた以外でも幅広い治療が行われていますが、保険がきかないため費用が高額になりがちなのが難点です。また、国によって治療の有効性と安全性が確認されていないのも、自由診療の注意点です。
1-2. 今後は保険適用を進めていく方針
前掲の表のように、まだ保険が適用されるものが少ない再生医療ですが、国は今後その範囲を広げていく予定のようです。
というのも、再生医療に対する期待が非常に高く、「自分が罹患している病気に対しても、早く保険適用で再生医療が受けられるようになってほしい」と切望する患者が多くいるためです。
そこで国は、有効性が推定され安全性が確認されたものについては、「条件および期限付き」で早期に承認、保険適用できる制度を設けました。
前掲の表で「<条件及び期限付き承認>」のリストにあがっている疾患の治療がそれにあたります。
ただ、これらの治療は、承認後にあらためて有効性と安全性の検証がなされる必要があります。
2. 保険が適用されるもの・されないものと自己負担額
では、実際に再生医療を受ける際には、どれくらいの自己負担額で治療を受けられるのでしょうか?
保険が適用されるもの、されないものに分けて見ていきましょう。
2-1. 保険適用されるもの
現在保険適用が認められている再生医療については、原則的に医療費の3割が自己負担となります。
ただし、以下の者は例外です。
・75歳以上の者:1割負担(現役並み所得者は3割)
・70〜74歳の者:2割負担(現役並み所得者は3割)
・6歳(義務教育就学前):2割負担
例えば100万円の医療費であれば、3割負担=30万円が自己負担です。
もし医療費の自己負担額があまりに高額の場合は、一定の金額(自己負担限度額)を超えた分をあとで払い戻す「高額療養費制度」というものがあります。
保険診療の場合、以下の表の限度額以上を負担することはありません。
ちなみに一例をあげると、2019年に脊髄損傷を改善させる再生医療等製品「ステミラック注」が保険適用となりましたが、この治療は1回分が1495万7,755円と非常に高額なものです。
3割負担でも448万7,326円となってしまいますが、高額療養費制度があるために何百万円も支払う必要はありませんので安心してください。
参考:「医療費の自己負担」(厚生労働省)
参考:「【中医協総会】ステミラックの保険適用了承‐算定薬価は1回1496万円」(薬事日報)
2-2. 一部に保険適用されるもの=先進医療
先進医療と認められている治療の場合は、自己負担額は以下のように計算されます。
1)治療全体のうち、「先進医療」にあたる部分の費用は保険適用外なので全額自己負担
→ 自由診療なので、自己負担額は治療の内容や医療機関によって異なります。
2)「先進医療」以外の通常の治療と共通する部分(診察・検査・投薬・入院など)の費用は、保険適用なので原則3割負担
→ 高額療養費制度も適用されます。
つまり、保険適用の治療と比較すると「先進医療」の分だけ負担が多くなるわけです。
例えば、以下のような計算です。
◾️ 総医療費が100万円、うち先進医療にあたる部分の費用が20万円だった場合
1)先進医療にあたる部分の費用20万円は全額を患者の自己負担
2)通常の治療と共通する部分(診察、検査、投薬、入院料 *)の費用80万円は保険適用で、患者は3割負担
先進医療20万円 + (保険適用80万円 × 0.3 = 24万円)= 44万円
※保険適用分の自己負担額=24万円が高額療養費制度の限度額を超える場合は、限度額までを負担
ちなみに過去に行われた先進医療の内容と費用については、厚生労働省が以下のようなリストを発表しています。
◎令和元年6月30日時点における先進医療Aに係る費用 令和元年度実績報告(平成30年7月1日~令和元年6月30日)
◎令和元年6月30日時点における先進医療Bに係る費用 令和元年度実績報告(平成30年7月1日~令和元年6月30日)
これを見ると、先進医療にあたる部分の医療費は、場合によっては数百万円という高額になるケースもありますので、医療機関に事前にかならず確認しましょう。
参考:「先進医療の概要について」(厚生労働省)
2-3. 保険適用外=全額自己負担のもの
保険適用のものと先進医療と認められたもの以外の再生医療は、すべて保険適用外の自由診療なので、費用は患者の全額自己負担となります。
自由診療の医療費には限度額などの規制がなく、医療機関ごとにまちまちですので、かならず事前に確認しておく必要があります。
ここでは、自由診療で再生医療を行なっている医療機関の費用について、いくつか具体例を紹介しておきましょう。
受診を検討する際の目安にしてみてください。
2-3-1. がん
がんに対する再生医療は、
・「NKTがんワクチン GC-MO」
・自己血由来の樹状細胞
・CTL(細胞傷害性Tリンパ球)
・ヒト自己活性化αβT細胞
などさまざまな細胞を用いて患者の免疫力を回復させる「免疫療法」が主流です。
その中から、NK細胞という細胞を用いた治療を行なっているAクリニック(仮名)の費用を一例として紹介します。
Aクリニック(仮名)でのNK細胞による免疫療法(6回1クール) |
1回360,000円 × 6回 = 2,160,000円 |
2-3-2. 変形性膝関節症
変形性膝関節症の治療には、
・多血小板血漿(PRP)
・自己脂肪由来幹細胞
・自己脂肪由来間葉系幹細胞
などを利用したものがあります。
その中のひとつ、Bクリニック(仮名)が行なっている自己脂肪由来間葉系幹細胞を用いた治療の費用は以下の通りです。
Bクリニック(仮名)での自己脂肪由来間葉系幹細胞治療 |
・カウンセリング:3,000円 合計 717,100円(両足 1,017,100円) |
2-3-3. アンチエイジング
肌質改善やしわ取りなど、若返り美容を目的とした再生医療を行う美容外科も多くあります。
・多血小板血漿(PRP)を用いた組織修復
・自己脂肪由来間葉系幹細胞を用いた局所注射
・自家培養線維芽細胞移植
などさまざまな治療が行われていますが、ここでは自家培養の皮膚線維芽細胞を移植しているCクリニック(仮名)の例をあげてみました。
Cクリニック(仮名)での自家培養皮膚線維芽細胞移植 |
・初診料:5,000円 合計 717,000円(1cc 2回)〜 |
2-3-4. 脱毛症
脱毛症などに対する毛髪再生は、
・自家多血小板血漿(PRP)療法
・自己脂肪由来間葉系幹細胞を用いた局所注射
などの方法で行われています。
その中から、脂肪組織由来幹細胞を注入する治療を実施しているDクリニック(仮名)の費用を紹介しましょう。
Dクリニック(仮名)での脂肪組織由来幹細胞注入 |
・血液検査:5,000円 合計 1,505,000円 |
2-3-5. 乳房再建
乳がんによる乳房切除などに対応して、再生医療で乳房再建をするには、
・脂肪組織由来再生幹細胞を用いた自家培養細胞による治療
が行われています。
これを実施しているEクリニック(仮名)では、以下の費用を公表しています。
Eクリニック(仮名)での脂肪組織由来再生幹細胞による乳房再建<自家培養脂肪+自家脂肪移植> |
1)乳房温存の場合 合計 約800,000〜1,000,000円
2)乳房全摘の場合(2回移植) 合計 約1,600,000〜2,000,000円 |
ここで紹介した5つの例はすべて、「再生医療等の安全性の確保等に関する法律」にしたがって厚生労働省に届出をしている医療機関で、ホームページなどで治療にかかる費用を公表しています。
再生医療を受ける際にはこの2点、
・厚生労働省に届出をしているか
・医療費を明らかに公表しているか
を確認することをオススメします。
3. まとめ
いかがでしたか?
再生医療と保険適用について、よくわかったかと思います。
では最後にもう一度、記事内容をおさらいしてみましょう。
◎再生医療には保険適用のものもあるが、現在は多くの再生医療は保険適用外
→今後は保険適用を進めていく方針
◎先進医療に認められている治療は、一部に保険適用される
◎保険適用外のものは、全額自己負担
→がん、変形性膝関節症、アンチエイジング、脱毛症、乳房再建など
これを踏まえて、あなたが自分で納得いく費用で再生医療を受けられることを願っています。
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