自分にピッタリの乳房を手に入れる!乳房再建の種類・メリット・デメリット

監修者
セルメディカルチームジャパン 編集部

 乳がんによって変形したり、失ったりした乳房を元のように取り戻したいー。こうした人の願いをかなえるため、乳房を再建する医療技術はめざましい進歩を遂げています。

では新しく乳房を手にするためには、どのような方法があるのでしょうか。最新の「乳房再建手術」を紹介しながら、そのメリット・デメリットなどを解説していきます。

▼セルメディカルチームジャパンのサイトでも詳しく説明されています。

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1. 乳房再建とは

 日本では女性の11人に1人が乳がんに罹患(りかん)するといわれています。国立がん研究センターの2017年の調査によると、女性の中でがんに罹(かか)る部位は、1位が乳房という結果が出ています。

 こうした中、乳がん手術で変形したり、失ったりした乳房を作り直すことを「乳房再建」と言います。乳房を失うことで精神的に落ち込み、つらく悲しい気持ちを抱え込んでしまう人は少なくありません。しかし、乳房再建手術を受けることで、元のような乳房を復活させて、温泉旅行やプールを楽しむなど術前と同じ生活を取り戻すことが可能になってきています。

 

2. 乳房再建の手術方法は「人工物法」と「自家組織法」の2つ

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 乳房再建の手術には、人工物法と自家組織移植法があります。

 人工物法は、乳房を切除した大胸筋の下にシリコン製の乳房インプラントを入れる方法です。乳房インプラントはお菓子のグミのような弾力性があり、万が一破れても内容物が流れにくくなっています。乳房切除の手術時に乳房インプラントを入れることもありますが、まず皮膚拡張器(エキスパンダー)という風船のようなバッグを入れます。その後、外来受診時に、生理食塩水を少しずつ加えてエキスパンダーを膨らませていきます。半年程度をかけて皮膚と大胸筋を十分に伸ばした後、乳房インプラントと入れ替える手術を行います。

 自家組織移植法は下腹部や背部、臀(でん)部などから自分の体の脂肪や皮膚を移植する方法です。①下腹部から皮膚と脂肪、筋肉の一部に血管を付けて移植②背部の皮膚と脂肪を広背筋に付けて移植という2つの方法があります。

 以前から保険適用だった自家組織移植法に対して、人工物法は2013年から保険適用となり、乳がんを患った人に乳房再建法の選択肢が広がり、再建の道が開けたことになります。民間の生命保険会社では、給付金を受け取る制度もあります。

 この他の手術として、まだ保険適用外ですが、大腿などの脂肪を吸引して乳房に注入する脂肪注入するといった新しい乳房再建手術もあります。再生医療としては、乳房を部分切除した人の脂肪組織から再生力の強い幹細胞を抽出し、乳房を再建する臨床試験も行われています。

3. 乳房再建のメリット・デメリットは

 人工物法による再建メリットは、手術時間が短いため体への負担が少なく、乳がん切除でできた傷の部位以外の場所に傷ができることがないことです。一方、デメリットとしては、インプラントという人工物を体内に入れるため感染症の恐れがあり、発症した場合には乳房インプラントを取り出さなくてはいけなく、長期のフォローアップが必要なことが挙げられます。厚生労働省は、専門医による10年間の経過観察が必要としています。もし不具合がわかれば、乳房インプラントを入れ替えることになります。ただし、必ずしも10年経ったら入れ替える必要があるということではありません。

 この手術に適した人は、乳房が比較的小さくて下垂が少なく、乳がんの切除後に乳房の皮膚や大胸筋が残っていることなどが条件となります。術後に胸部に放射線照射をした人は、乳房インプラントによる再建が難しくなります。放射線を照射した皮膚は硬く伸びにくくなり、組織がもろく感染が起こりやすいためです。

 一方、自家組織法のメリットは、温かみがある、触って柔らかいなど、乳房インプラントと比べると再建した乳房に違和感が少ないことです。人工物を使用したくない人や乳房に柔らかさを求める人、すでに放射線治療を受けている人に適しています。デメリットとしては、手術時間が長く、組織を切り出したおなかや背中などに新たな傷ができ入院期間が長いことです。また将来、妊娠・出産を希望する人には、腹部の皮膚や脂肪、筋肉の一部を血管がつながっている状態で、胸部へ移植する手術方法は使用できません。

4. 乳房再建を行う時期やタイミング

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 乳がんの手術と同時に再建を行うことを「一次再建」と言います。全摘するなら「乳房再建をしたい」と気持ちが固まっている人には、手術回数、入院回数、費用を抑えることができるなどのメリットがあります。

 これとは別に「二次再建」と言って、乳がんの手術後に再建を行う方法があります。乳がん手術の前には、再建するかどうか整理がついていない人は、無理に一次再建をする必要はありません。二次再建には乳がんの治療が終わってからゆっくり考えることができるというメリットがあります。

 しかしながら、乳房再建手術が普及したとはいえ、乳がんの治療を行っているすべての病院で再建手術が受けられるわけではありません。乳がんの治療を担当する乳腺外科医と、再建を担当する形成外科医がそろっていなければ同じ病院で治療することはできません。

 乳房再建手術が受けられない病院で乳がんの治療を受ける人は、乳がんの治療が一段落した後に乳房再建を行っている病院での二次再建となります。希望の病院を要求することもできるので、主治医に紹介状を書いてもらう手続きをとってもらいましょう。一次再建を希望する場合は、術前に一次再建ができる病院に転院することになりますが、乳がんの状態によってはお薦めできないケースもあります。

 

5. 再建できるのは乳房だけ?

 乳がん治療によって乳頭・乳輪を切除した場合は、乳房の形が完成した後に、手術によって、乳頭と乳輪を作ることができます。

 乳頭の再建法には、皮膚を持ち上げて作る局所皮弁法と、反対側の乳頭の一部を切って移植する方法があります。乳頭の形や大きさなどから判断して選択します。

 乳輪の再建法には、太ももの付け根の皮膚を一部切り取って移植する方法と、医療用の刺青を使う方法があります。手術時の麻酔は、局所麻酔、または全身麻酔になります。入院期間も12日の入院が必要な場合や日帰り手術など方法によって異なります。事前にしっかりと専門医の説明を聞いて、自分に合った方法を選択することが大切となります。

 

6. 乳房再建後の治療やリハビリ

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 乳房再建手術の方法によって、術後の下着や運動を開始してよい時期は異なります。

例えば、一次再建を受けた場合、術後7~10日で退院となります。退院後は胸にバストバンドを付けますが、動きの制限などはありません。痛みに対する感じ方や心配は人よって異なりますが、体を使うような仕事であっても人工物法で術後約2週間、自家組織移植では1カ月あれば復職できるケースが多くみられます。ただし、日常生活や仕事への復帰は、自分で決めるのではなく、乳房再建を担当した主治医と相談しながら進めていきましょう。

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