再生医療の安全性の実態とは?実用化の背景と受診前に確認すべきこと

監修者
セルメディカルチームジャパン 編集部

 最近、よく見聞きするようになった「再生医療」という言葉。世間の注目を集める一方で、その安全性については気になるところ。再生医療は費用が高いからといって、安全性や有効性も高いとは限りません。今回は再生医療とはどのような治療法なのか、本当に安全なのか、実用化に至った背景や受診の前に注意しておくべきことを紹介します。

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1. そもそも再生医療って?

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 再生医療とは、病気やけがなどの理由で障害や機能不全に陥った生体組織や臓器に対して、細胞や人工的な材料を利用し、損なわれた機能の再生を図る治療法です。現在、難病の治療は手術での根治療法が行えず、薬や療養での対症療法を行っている患者を中心に治療が行われています。

 もともと、私たちの体には「再生する力」が備わっており、骨折やすり傷、やけど、打撲などのけがは、体が備える治癒力で治すことができます。トカゲのしっぽが切り離されてもまた元通りになるのと同じイメージです。再生医療では、従来のように薬を使って病気やけがを治すものではなく、人の体に備わる「細胞」と「再生する力」を利用して、損なわれた機能の再生を図ります。

 人の体は200種類以上の細胞で構成されています。皮膚や血液のように組織や臓器となった細胞を「体細胞」、これから組織や臓器になる未分化の細胞を「幹細胞」と呼びます。このうち、幹細胞は再生医療に用いる細胞として高く期待されています。

 

2. 実用化の背景には研究者たちの長い戦いがあった

 再生医療は新しい治療として注目を集めており一日も早い実現を目指していますが、まだまだ課題は山積みです。一説では、1950年代ごろが再生医療の始まりだといわれています。当時、再生不良性貧血や白血病などの疾患に対して、造血幹細胞を輸注していました。これは、現在の骨髄バンクや体性幹細胞を用いた再生医療の研究に繋がっています。

 現在も再生医療の研究は進められています。みなさんの記憶に新しいのは、2006年に誕生した「iPS細胞」ではないでしょうか。2012年には、京都大学の山中伸弥教授にノーベル医学・生理学賞が授与されました。

 近年、再生医療の実用化を図るために、厚生労働省により「再生医療実用化研究事業」が立ち上がっています。再生医療の研究開発から実用化の推進を図り、医療の質及び保健衛生の向上が事業の目的です。

 

以下のような再生医療の有効性の研究が進められています。(一部抜粋)

・血行の悪い下肢の血流改善(バージャー病など)

・皮膚の再生(やけどなど)

・角膜の再生(角膜変性や角膜混濁など)

・顔や顎の再生(口蓋裂や歯槽骨の欠損の再生など)

・脳の機能回復(パーキンソン病や脊髄損傷など)

・網膜の再生(網膜色素変性症など)

 

また、再生医療で扱う幹細胞は人が手を加えて作成した細胞であるため、安全性や倫理性の研究なども進められています。

 

3. 再生医療って安全なの?

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 201411月に、厚生労働省令で「再生医療等の安全性の確保等に関する法律」「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」という安全性の確保に関するルールが施行されました。それぞれの法律を紹介します。

 

□再生医療等の安全性の確保等に関する法律

 この法律は、再生医療を提供する施設の規制を定めたものです。医療施設や細胞培養加工施設が再生医療を行うには、厚生労働大臣からの認定を受けなければなりません。再生医療を行う医療機関は提供計画書の提出、自院で治療用の特定細胞加工物を製造する場合にも書の提出が必要になります。

 

□医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律

 人や動物の細胞を加工して作られた再生医療等製品は、医薬品や医療機器に比べると品質にばらつきが多く、症例数も少ないため、厚生労働省の承認までに時間がかかっていました。そこで、少ない症例数でも一定の条件や期限を満たすことで承認が与えられるように、旧薬事法が改正されました。再生医療等製品が厚生労働省に承認されて、公的医療保険の対象となれば、患者はより再生医療を受診しやすくなります。

 

4. 再生医療を受ける際にチェックしたいこと

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 前述したように、再生医療等を提供する医療機関は、厚生労働大臣からの承認を義務づけられています。希望する治療が正しい手続きを経て承認されているかは、下記のサイトを使えば一般の人でもチェックできるので、見ておきましょう。

 

参照:厚生労働省「再生医療等提供機関一覧(各種申請書作成支援サイトで登録されているもの)」

https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000186471.html

参照:JRCT「臨床研究実施計画・研究概要公開システム」

https://jrct.niph.go.jp/search

 

 その他にも、本やネットなどを使って、十分な安全性や有効性、科学的根拠、前例についても調べ、主治医の説明を求めるのもいいでしょう。

 

5. まとめ

 再生医療は、細胞や人工的な材料を利用して損なわれた機能の再生を図る治療法です。iPS細胞を使用した移植手術が行われ大きな成果を上げる一方で、症例数が少ないことから安全性や有効性についての法整備が進められています。再生医療での治療を望んでいる場合は、自分で情報収集をしてから、主治医や信頼できる人に相談し、判断することをおすすめします。

 

参考:厚生労働省「再生医療等の安全性の確保等に関する法律について」

https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-10800000-Iseikyoku/0000079192.pdf

参考:厚生労働省「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」

https://www.mhlw.go.jp/content/11120000/000665345.pdf

 

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