「メスを使わない医療?」美容の常識を変える肌再生医療とは

監修者
セルメディカルチームジャパン 編集部

 再生医療の技術を用いて肌を若返らせる「肌再生医療」の研究が進み、年齢と共に老化した肌をみずみずしい肌へとよみがえらせる治療が受けられるようになってきました。美容医療において肌再生の治療は、始まったばかりの新しい技術です。ではいつから実用化され、どのような治療方法が行われているでしょうか。詳しく解説していきます

1. メスを使わず肌をよみがえらせる「肌再生医療」とは

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 肌再生医療とは、しわ、しみ、たるみといった老化したり、傷んだりした箇所に自身の元気な細胞を移植して、生き生きとした肌によみがえらせる美容治療のことをいいます。

 私たちの肌は、皮膚の奥の真皮(しんぴ)にある線維芽細胞(肌細胞)が重要な役割を担っています。なぜならば、この線維芽細胞には肌の潤いや弾力、はりを支える「コラーゲン」、「エラスチン」、「ヒアルロン酸」という成分があるからです。しかし、線維芽細胞は、加齢以外にも乾燥や紫外線によるダメージを受けると機能が低下し、コラーゲンなどの成分を新たに生み出すことができなくなります。このメカニズムによって肌にしわやたるみができてしまいます。これは女性に限ったことではなく男性も同じです。

 では、しわやたるみの原因となる元気をなくした線維芽細胞を再び活性化させる画期的なメスを使わない肌再生医療とは、どのような方法があるのでしょうか。

2. 肌再生療法の手術法

 肌再生医療には「線維芽細胞療法」と多血小板血漿(けっしょう))と呼ばれる「PRP療法」があります。

 線維芽細胞療法は、自分の耳の裏から採取した線維芽細胞を培養し、増殖した細胞を気になる部位に移植する治療法です。

 対処療法として行われているヒアルロン酸注入に対して、線維芽細胞療法は自身の細胞によって皮膚の再生を促すための根本治療ともいえます。アトピー性皮膚炎やステロイドの長期使用に伴う皮膚症状や加齢による顔のしわやたるみ、目の下のくまなどの改善に有効です。このため加齢による心身の衰えをできるだけ抑えるエイジングケアを目的として行うことも可能です。

 PRP療法は、自分の血液中にある血小板が放出する成長分子を活用し、損傷した組織を修復することです。具体的には、自身の血液から抽出した多血小板血漿を気になる部分に注入し、皮膚の再生や若返りをする方法。顔や首、手の甲にできたしわやたるみなどに適応されます。

 線維芽細胞療法とPRP療法は、いずれも人工物ではありません。自身の細胞や血液を使用するため、アレルギーや感染症の恐れがないとされています。

3. どの医療機関で治療を受けられるのか

 そもそも、再生医療が医療現場で行われるようになったのは、ごく最近のこと。世界で初めて人工的に作製される人工多能性幹細胞「iPS細胞」を用いた移植手術が行われたのは、2014年9月のことです。美容医療の現場では、PRP療法はその数年前から行われていましたが、国は再生医療を推進するために、法整備を行いました。201411月に「再生医療等の安全性の確保等に関する法律」が施行され、再生医療を行う医療機関は再生医療等委員会の承認を経て、厚生労働省に届け出を行わないと治療を受けることができなくなりました。

厚生労働省のホームページに届け出をした医療機関の一覧(https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000186471.html)があります。再生医療を受けるときは、同意説明文書をよく読み、医師からの十分な説明を受けて、理解、納得した上で検討することが大切です。

 

4. 肌再生医療にはどのようなリスクがあるのか

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 肌再生医療で想定できるリスクはいくつか挙げられます。PRP療法では、無駄にコラーゲンが増えすぎて肌にしこりができることがありえます。この他には、注入時の痛みや、施術後の腫れ、効果に時間をかかったり、注射の跡が内出血したりして残ることがあります。

しかし、これらのリスクは受診する医療機関次第で回避できることがほとんどです。肌再生医療は厚生労働省が安全性や医師、設備の管理体制など厳しく審査して基準を満たした医療機関しか提供でません。それだけ専門性と経験、そして整った環境が必要な医療といえますが、第二種・三種再生医療計画番号を取得しないまま、肌再生医療を行う医療機関も現存しています。先述した厚生労働省のホームページに掲載された届け出を済ませた医療機関の計画番号の確認、施術内容の確認を行った上で、病院を選ぶことがリスクを避けることにつながります。

 この他に医療安全支援センター(http://www.anzen-shien.jp/)で各医療機関の効果や料金などの情報を集めることもリスク回避の方法です。このセンターは医療法の規定に基づき、都道府県、保健所を設置する市および特別区により、全国で380カ所以上設置されています。医療に関する苦情、心配や相談に対応するとともに、医療機関、患者・住民に対して、医療の安全に関する助言および情報提供を行っています。

 仮に契約内容や支払い方法、施術の効果などでトラブルになった場合には、医療機関から受け取った書類や説明時に取ったメモを準備して、最寄りの消費生活センターに相談してください。消費者ホットラインの電話番号は局番なしの「188」。お住まいの地域の市町村や都道府県の消費生活センターを案内する全国共通の電話番号です。

リスクを避けるためには受診する人が、どうやって情報を集めるかが重要になります。ぜひ、厚生労働省や医療安全支援センターなどを活用することをお勧めします。

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