変形性膝関節とは?原因や症状、治療法ってどんなもの

監修者
セルメディカルチームジャパン 編集部

 歩き始めたり、椅子から立ち上がろうしたりするとき、膝に痛みを感じることはありませんか? そのまま放置すると、慢性化して強い痛みに苦しむこともあります。こうした症状がある人は変形性膝関節症の疑いがあります。ではどうやって治療するのでしょうか。変形性膝関節症の要因や予防法、治療法を詳しく紹介していきましょう。

▼セルメディカルチームジャパンの専門医がホームページでも詳しく説明しています。

https://www.cellmedicalteamjapan.com/

1. 変形性膝関節とは?

 変形性膝関節症とは、膝軟骨のすり減りの影響から関節内に炎症が起きて痛みが生じるという膝の代表的な疾患です。

5060代での発症が多く国内だけでも推定1000万人。痛みを自覚していなくてもエックス線検査の所見上での患者数を含めると、3000万人ともいわれています。男女比は14で女性に多くみられ、高齢者になるほど罹患率は高くなります。主な症状は膝の痛みと水がたまることです。

 冒頭でも述べた通り、初期症状としては、①階段の上り下りがつらい②しゃがんだり正座したりすることが難しくなってきた③立ち上がろうとすると膝が固まるといった症状が多くみられます。

老化現象と勝手に自己診断して何も処置しないと、軟骨だけでなく、半月板や骨自体にも損傷が及んでしまい強い痛みに加えて歩行が困難になるケースもあります。

▼セルメディカルチームジャパンのサイトでも詳しく説明されています。

https://www.cellmedicalteamjapan.com/

2. どのような原因で変形性膝関節になるの?

出典:Alexandr Mitiuc- stock.adobe.com

 いくつかの原因が考えられます。まずは、老化により軟骨に栄養を供給しているヒアルロン酸が減少することで、軟骨が傷つきやすくなるといわれています。肥満も代表的な危険因子です。人が歩くときには、体重の約3.1倍の負荷が膝にかかります。体重が重いほど膝に負担がかかりやすく、軟骨や半月板が傷つきやすくなります。日本人に多いO脚は膝の内側に体重がかかり、内側の軟骨が傷つき痛みを発症することがあります。

 この他には、半月板損傷や靭帯(じんたい)損傷、捻挫や骨折といった過去の外傷や、関節リウマチなどの病気の後遺症、立ち仕事や激しいスポーツで発症する場合もあります。

3. 予防法とは

 筋力の低下が膝痛に影響します。中でもお尻の筋肉である大臀(でん)筋と、広い範囲で脚をサポートする内転筋、膝を守る大腿四頭筋の筋力の低下が関係しています。このため、それぞれの筋力を付けることで予防できます。その筋トレ方法を紹介しましょう。

 大臀筋のトレーニングは仰向けに寝て、片足は床につけ、もう片方は膝を伸ばしてまっすぐ上げたまま、お尻を持ち上げて3秒キープ。これを3回、左右の脚で行います。

 内転筋のトレーニングはまっすぐ立った姿勢にして、脚を開き、膝頭のあたりで硬めの枕やクッション、2つ折りにした座布団などをはさんで、内腿(うちもも)に力を入れて3秒間キープ。これを3~5回繰り返します

 また、正しい歩き方をするだけで、大臀筋と内転筋が鍛えられます。背筋を伸ばし、前に脚を出したときに膝が伸びていないといけません。前足はかかとからついて、後ろ足は母趾(ぼし)でしっかり蹴りだすと、膝が自然と伸びます。

 この他に正座をさける。肥満であれば減量するなどが挙げられます。

4. 変形性膝関節になってしまったら、どのような治療法があるのか

出典:chompoo- stock.adobe.com

 変形性膝関節症の治療は、手術を行わない保存療法が基本です。 特に初期なら予防法でも紹介した「運動療法」と「生活環境の改善」だけで十分によくなります。

 ただし、運動療法を積極的に行うためにも、痛みの改善が必要です。そこで、薬物療法が取り入れられます。代表的なものは、関節内にヒアルロン酸を注射で注入する方法です。ヒアルロン酸は、もともと関節内の関節液に多く含まれています。このため、ヒアルロン酸を直接膝関節に注入することで関節の動きを滑らかにし、軟骨を守るとともに、膝の痛みや炎症を抑えることができます。注射は原則毎週1回、5週間にわたって行います。効果があればその後、症状に合わせ24週間に1度注射します。運動療法などと組み合わせることで病気の進行を遅らせ、生活の質を改善します。症状が再発した場合には繰り返し注射を受けられます。

膝の炎症などがひどく、水がたまり痛みが強い場合は、ステロイド剤を関節の中に注射します。炎症の抑制や痛みの軽減が期待できますが、繰り返し注射すると関節の軟骨に悪い影響があることが報告されていますので、担当医の判断によって使用されます。

飲み薬としては痛みや炎症を抑える非ステロイド性消炎鎮痛薬を服用します。痛みがひどくて動けないようなときに痛みをとるのに有効ですが、長期間毎日のように服用を続けると胃腸障害などの副作用が起こる可能性もあります。

この他に、膝にかかる負担を軽減させて関節を安定化させる装具療法もあります。代表的なものはサポーターです。自分で手軽に使用できますが、サポーター自体には膝関節の負担の軽減や関節の安定化作用は期待できません。装着したときに感ずる安定感と関節の保温が主な効果です。さらに安定感を高める支柱付きサポーターもあります。

6. 変形性膝関節で手術、どのようなリハビリがあるのか

 保存療法でも効果がみられなかったときは、手術に踏み切ります。①関節鏡視下手術②高位脛骨(けいこつ)骨切り術③人工膝関節置換術の3つの手術があります。

 関節鏡視下手術は、内視鏡を挿入し、損傷した半月板や軟骨のささくれなどを切除する手術。早ければ2〜3日での退院が可能となります。

 高位脛骨骨切り術は、膝の骨を切開して金属プレートなどを差し込み、骨の傾きを矯正するという手術。O脚が進行したケースに検討されます。

 人工膝関節置換術は軟骨がすり減りなくなってしまった場合に、壊れてしまった膝の関節を取り除き、金属やプラスチックでできた人工の関節に取り替える方法です。

 いずれも術後は、翌日よりリハビリを開始します。最初は膝の曲げ伸ばしが中心ですが、筋力の回復とともにできるだけ早く歩行練習を開始します。階段練習・日常動作練習を経て、自信がついたころに退院となります。必要であれば、外来通院でリハビリを継続します。

 また、近年注目されているのは再生医療です。代表的なものが自分の血液中にある血小板が放出する成長分子を活用し、損傷した組織を修復する多血小板血漿(しょう)「PRP」療法があります。

 さらに人工多能性幹細胞(iPS細胞)から作った軟骨組織を、膝関節の軟骨を損傷した人に移植して治療する臨床研究計画も進んでいます。すり減ってしまった軟骨は通常再生が難しいとされていますが、培養した軟骨を植える、軟骨になりやすい細胞を注入するといった先進の再生医療が、一般的な治療法として取り入れられる日は近づいてきています。

 

▼セルメディカルチームジャパンのサイトでも詳しく説明されています。

https://www.cellmedicalteamjapan.com/

- コメント -